「罪の声」を読みました
先週、夏休みをいただきました。
その間に呼んだ小説「罪の声」。
我々世代(1968年生まれ)ならば記憶にもあるであろう「グリコ森永事件」を題材にしたミステリーです。星野源さんと小栗旬さんの主演で映画化されることも決まっています。
(僕には「映画化が決まると原作が読みたくなる」という習性があるようです…)
非常に面白い小説だと思ったので紹介します。
グリコ森永事件は1984年から1985年にかけて発生した、誘拐・企業脅迫・殺人未遂事件。結局犯人は捕まらないまますべての事件が時効を迎え、「未解決事件」となり迷宮入りしました。
犯人グループの一人と目される「キツネ目の男」 の似顔絵、犯人が名乗った「かいじん21面相」の名前、「どくいり きけん たべたら しぬで 」と書かれたお菓子がばらまかれたことなどが印象的です。
当時、僕は高校生で、詳しくは覚えていませんでしたが、事件の記憶はあります。
実際にグリコ森永事件では犯人からの指示に「子供の声」の録音テープが使われました。
小説の主人公は京都で父の代から続くテーラーを営む青年。ある日、父の遺品の中からカセットテープと手帳を発見します。青年がテープを再生するとそこに録音されていたのは、事件で使われた子供の声であり、その声の主が子供の頃の自分であったことを知ります。手帳には事件に関りがありそうな記述が。
既に家族を持つ身であり、自分と事件の犯人との関係が明らかになれば、もしかすると家族の平穏が失われるかもしれない。一方で「謎のままではいけない」と感じ、事件の真相を知りたいという思いに揺れ動きます。
もう一人の主人公は新聞社の記者。未解決事件の真相に迫る特集記事の担当となり、事件を調べることに。元新聞記者である筆者ならではのリアリティある取材活動が物語を面白くしています。
別々に調べ始めた二人の距離は真相に迫るうちに徐々に縮まっていきます。
グリコ森永事件では、何度か身代金の要求が行われていますが、実際には(表向きは)一度も犯人が身代金を手に入れていません。
最初の事件、江崎グリコ社長の誘拐事件で犯人は「10億円の現金と100㎏の金塊」を要求していますが、10億円の現金は重さにして130㎏。かなりの重量とボリュームになります。さらに100㎏の金塊と合わせて総重量230㎏を運搬するのは非現実だとも考えられ、そもそも身代金を奪うことが目的ではなかったのではないかとも言われています。
では犯人の目的は何だったのか。
上場企業を狙い、マスコミを利用した「劇場型犯罪」とも言われるこの事件。もちろん犯人は捕まらず、真相は闇の中ではあるものの、ひとつの有力な説として「株価操作」が目的だったのではないか、とも言われています。
小説では、もちろんフィクションではあるものの、グリコ森永事件をイメージしながら、そこに関係した犯人とその家族の存在、事件の背景などを解き明かしていきます。
警察庁広域重要指定事件に指定された事件では初の「未解決」となったグリコ森永事件。今なお謎だらけの事件であり、それだけに小説の題材としてとても面白いと感じました。
おすすめです。