障害のあるお子さまの「親亡き後」に備える相続対策― 成年後見制度と任意後見をどう考えるか ―

障害のあるお子さまをお持ちの親御さまにとって、相続対策は単なる節税の問題ではありません。
本当に大切なのは、自分がいなくなった後も、わが子が安心して生活を続けられる仕組みを整えることです。
そのために考えるべきことは、主に次の四点です。
- 将来の生活費はいくら必要か
- 公的年金や手当でどこまで賄えるか
- 不足額をどう補うか
- その財産を誰が、どう管理するか
特に最後の「管理の仕組み」は極めて重要です。ここで必ず検討対象となるのが、成年後見制度と任意後見契約です。
成年後見制度とは何か
成年後見制度は、判断能力が不十分な方を法的に支援する制度です。
家庭裁判所が後見人を選任し、本人に代わって財産管理や契約行為を行います。
例えば、
- 銀行口座の管理
- 不動産の売却
- 施設入所契約
- 悪質商法への対応
といった重要な手続きを、法的代理人として確実に進めることができます。
障害の程度に応じて「後見」「保佐」「補助」の類型があり、支援範囲が決まります。
成年後見制度のメリット
最大の強みは、法的な強さと確実性です。
後見人は正式な代理人であり、不利な契約を取り消すことも可能です。金融機関や不動産会社との取引でも問題なく対応できます。また、後見人は家庭裁判所への報告義務があるため、財産管理の透明性も高く、きょうだい間のトラブル抑止にもつながります。
専門職後見人が選任されれば、兄弟姉妹の事務的負担を軽減できる点も現実的なメリットです。
一方で、見逃せないデメリットも
成年後見制度は“守り”には強い一方で、柔軟性に欠ける面があります。
① 原則として終身継続
一度開始すると、原則として本人が亡くなるまで続きます。
「特定の手続きだけ必要」というケースでも、簡単に終了できません。
② 財産活用の制約
制度の目的は財産保全です。そのため、
- 不動産売却には裁判所の許可
- 積極的な資産運用は困難
- 生前贈与は原則不可
といった制約があります。生活の質向上のための支出でも、自由度は高くありません。
③ 継続的な費用
専門職後見人が就任すると、年間数十万円の報酬が発生することもあります。長期にわたれば大きな負担となります。
任意後見という選択肢
こうした課題を補う制度が「任意後見契約」です。
任意後見とは、本人が元気なうちに、将来判断能力が低下した場合に備えて、信頼できる人と契約を結んでおく制度です。公正証書で契約を作成し、実際に判断能力が低下した時点で効力が発生します。
任意後見の特徴は、自分で後見人を選べること、そして契約内容をある程度設計できることです。
例えば、
- 財産管理の範囲を具体的に定める
- 生活費の支出方針を決めておく
- きょうだいとの役割分担を整理する
といった設計が可能です。
親御さまが主導して仕組みを作れる点は、大きな安心材料になります。
成年後見制度の見直し議論
近年、成年後見制度は「硬直的で使いにくい」という指摘を受け、法務省で見直しの検討が進んでいます。
議論の中心は、
- 利用期間を限定できる仕組み
- 支援する行為を限定する設計
- 類型(後見・保佐・補助)の柔軟化
といった方向です。
つまり、「必要なときに、必要な範囲だけ利用できる制度」への転換が模索されています。
もっとも、現時点ではまだ検討段階であり、実務上は現行制度を前提に設計する必要があります。
相続対策としての現実的な考え方
西山ライフデザインでは、成年後見も任意後見も「手段の一つ」として考えます。
それ以上に重要なのは、
- 将来生活費の具体的試算
- 公的支援制度の確認
- 不動産の扱いの整理
- きょうだいとの合意形成
- 遺言書による分配設計
です。
場合によっては、
- 任意後見契約
- 財産管理委任契約
- 公正証書遺言
- 生命保険の活用
を組み合わせることで、より柔軟で現実的な設計が可能になります。
制度を使うこと自体が目的ではありません。
目的は、「親がいなくなった後も、安心して暮らせる環境を整えること。」
相続対策は「お金の話」ではなく、「人生設計の話」です。
まずは現状整理から
不安を漠然と抱えるのではなく、
- 財産はいくらあるのか
- 年間生活費はいくらか
- 不足額はいくらか
を整理するところから始めましょう。
西山ライフデザインは、障害のあるお子さまを持つご家族の将来設計を、数字と制度の両面から支援します。
親亡き後問題は、準備次第で大きく変わります。
今できる一歩を、一緒に考えていきましょう。













